表れる気持ち


『優しい気持ちで接すれば、それに応えてくれるからね』

微笑みながらの言葉に、体の体温が上がり、ドキドキした事を覚えている。


冷房の効きすぎた室内、
長イスに座り、順番を待つ人々
様々な声が重なり様々な音を作り上げている室内を通り抜け、
廊下に面している売店へと体を向け、
並べられている商品から欲しいものを手に取る。

パンにするかおむすびにするか・・・
それともカップメンにするか・・・・

並べられている商品を手に取り返してゆく。

調理パンの1つを手に取り、2つ目を選んでいると
名を呼ばれた気がし、左右を見回す。

あ・・・

知る人物は、松葉杖を付き不思議そうに自分を見ていた。

「たちばな・・くん」

何故彼がココに?
そんな疑問と驚きが混ざり名前を呼べば、

「どうしたんだ、こんな所で?」

片手を挙げ、挨拶をすれば、歩きにくそうに近づいくる。

「お昼ゴハンを買いに・・
 橘君は?」

無意識に目に入ってきた足に巻かれた包帯に気付きながらも、
違う話を振れば、

「昼は食べたんだが足りなくてな」

苦笑しながらの言葉に、
そうかもしれない・・・・
と、勝手な納得をしてしまい、並び一緒に商品を選んだ。

菓子パン2つにミルクティーを購入。
隣に立っていた橘はおむすび数個購入した。

「橘君、足、松葉杖じゃなくて車椅子の方が良いんじゃない?」

支払いを終え、部屋へ戻ろうとしている橘に遠慮がちに話しかけたが、

「リハビリも兼ねてなんでな」

苦笑と取れる笑みを見ながらも

「決められたリハビリをしているんでしょ?
 少しは足を休めてあげないと直らなくなっちゃうよ」

テニス部で顧問兼部長をかねている彼がココに居る。
と、言う事は試合中にケガをし、直すには時間のかかるケガ。

捻ったのではなく筋関係のケガ

橘と言う人物を考えれば簡単にケガの事は想像でき、
今の季節には早期回復をしなければならないのも解った。

が、焦って無理をすれば取り返しの付かない事になる。

余計な心配なのは十二分に解っていたが、
言葉にしなければいけない気がした。

「その通りだな。
 すまないな、心配させて」

申し訳無さそうに笑いながら言葉を続けた。

「ところで、はどうしてココにいるんだ?」

「私?」

微笑んだ表情から、真剣な表情に変えといて来る言葉に驚き
聞き返せば、あぁ、頷き言葉を待っている。

「私は、手伝いというかボランティアかな・・・」

真顔と微笑んだ表情の間の様な、どっちつかずの表情で返せば、

「そうか」

首を動かし頷いてくれ、微笑むことが出来た。
が、立ったまま話し込んでる事に気付き、

「あ!
 ゴメン、足痛まない?大丈夫?」

慌て謝りを入れるが、

「大丈夫だ。
 それより、はドコで食べるんだ?」

低い声が、真実味を帯び、疑う事を消し去り
問われた言葉の答えを探し、周りを見渡す。

まず、目に入ったのは外の風景。
そして、多数の人々がいる待合室。

「外は暑いから、そこらへん・・かな」

適当な場所を示し、苦笑いをしながらの答えに

「だったら、病室に来ないか?
 何も無いが、ココより落ち着いて食べられると思うが」

突然の言葉に、呆気に取られ立ちすくんでいれば

「行くぞ」

断りを入れる間もなく、遠ざかる背中を見ていれば、
早く来いよ。
との言葉を言われ、小走りに追い付き横に並び歩くが
話す事も無く、下に視線を下げれば、買い物袋が持ちにくそうに持たれていた。

「橘君、コレ持つよ」

松葉杖の真横で揺れている買い物袋を指差し、
相手の返事を待たず自分手のへと移動させた。

「悪いな」

横に並び、エレベーターを待っていれば、
頭の上から言葉が降り、

「ケガさんに遠慮はいらないと思います」

揶揄を含ませ言葉を返し、扉の開いたエレベーターへと乗り込んだ。

数人が乗ったエレベーターは各階ごとに止まり、増えたり、減ったりし
2人が下りる時には誰も居なくなっていた。

扉を閉めると、誰かが呼びボタンを押したのか、
下へと下がり、先に歩きだした背中を見ながら後に付く。

大きな背中だなぁ・・・

視界に入る背中に、安心感を感じ、橘桔平と言う
人物がどういう人物なのか解る。

だから、2年生が着いて行く訳だ。

それだけではなく、ひそかに応援している生徒も居るし、
影ながら先生達も応援してる。

前のテニス部では考えられない事で・・・

まぁ、やり方がやり方だったから悪印象が付いても仕方ないか・・・

今、思えばそれだけテニスが好きだと解るし。

背中1つから思い出された事に小さく笑ったり、苦笑したりと表情を変えていたが為、
いつの間にか振り返えられ、見下ろされている事に気付き、
申し訳なさそうな表情をすれば、溜め息を落とし、

「話し掛けても返事がないと思えば、人で遊ぶなよ」

落ちた息と共に落とされた言葉に、呆れの混ざった声に変わり、

「申し訳なない」

謝りを入れ、部屋に入っていく背中を見送れば

「入ってこい」

誘われるまま部屋へと足を入れ、

お邪魔します。

断りを入れた後、用意されたイスに近づいた。

ベットに腰をかけたのを見、持っていた買い物袋を手渡せば、

「悪いな」

謝りの言葉をくれる。

合図もきっかけも無かったはずなのに、2人同時にパンを手に取り食べ始める。
周りの雑音以外音が無く、食べ続けていると視界の端に外の風景が入り、
一人の人物を捕らえた。

パジャマ姿で花壇の前に座っている人。

1度、目に入ってしまうとジッと見てしまし、視線に気付いたのか、
立ち上がり、顔を上に上げた。

ヤバイ!

慌て視線をはずし、ゆっくりと戻せば、看護婦と楽しそうに話していた。

ビックリした・・・

冷静に考えれば、地上から気付く事なんて難しいし、
自分なら絶対に気付かない。

緊張から体を解き溜め息を落とし、食べかけだったパンを口の中に入れた。

「話しには聞いていたが、は表情で会話をするんだな」

「え?」

突然言われた言葉に思考が着いていけず、不思議そうに首を傾げれば、

「歩いている時もそうだったが、窓の外を見てからコロコロと表情が変わって、
 何を考えているかが、すぐに解ってな」

ゆっくりと作られる言葉に、目を大きくするが、直ぐさまキツクし、

「それって・・」

声を低くし、反論を試みるがノックの音が聞こえ、返事をすると、
女の子が入り、遠慮しながらも挨拶と共に入って来た
人物は柔らかな雰囲気を出していた。

「兄さん、調子はどう?」

少女の言葉でベットに居る橘の妹なのだと解ったが、向けられる視線に、

「始めまして、不動峰中3年ので、橘君とは同じクラスです」

立ち上がり、会釈をすれば慌て

「妹の橘杏です」

自己紹介と共に頭を下げられ、
橘の妹なのだと態度で納得した。

兄が出来た人物なら妹も立派になるのね・・・

奇妙な納得で満足感で満たされるが、
立ったままで居る人物に頭を悩ます。

ウチと制服に似てるけど、こんな雰囲気を持った人は居なかった・・・はずだし・・
他のクラスには居ない・・・
となると2年かなぁ・・・

口元に曲げた指を当てていれば、

「青春学園、3年、不二周助です」

よろしく。

クスクスと笑いながらの自己紹介に、今度はが慌て

「よろしくお願いします」

と、勢い良く頭を下げれば

さんは隠し事が出来ないでしょう?」

顔を上げた瞬間に視界に入って来た微笑みに驚き、

「ワタシ、また顔に出てました?」

カタコト混じりの言葉に橘の笑いを隠した表情に肩を落とし、
体の中に溜め息を落とした。

なんだかなぁ・・・

表情が豊かだ。

そんな言葉を言われる事が多かったが、
考えが解る程顔に出ていたとは思ってもなく、
少しばかり落ち込んでみるが、周囲の真剣な雰囲気に気付き、
部屋を出る為、足を動かしかけるが、目の前にベット、背中には日が差し込む窓。

自分が部屋から出るには橘に声をかけ、
妹の杏ちゃんと不二君の間を抜けてドアを出なければならない。

出にくい・・・

深刻差を帯びてくる話は、ケガの話になっている。

私が聞いてて良いのかなぁ・・・

テニスのルールも知らなければ、
今日まで橘が入院している事も知らなかった。

そんな人間が話しを聞いて良いのかと思うが
聞こえてくる話に興味を持ってしまう。

立海ねぇ・・・

どこの学校だろう?

初めて聞く学校名が印象に残る。

そんな中、勢い良くドアを開き侵入してきた人物に、
全員の視線が集まり、どうしてこの部屋に来たのか?
橘の知り合いなのか?解りたい事が何1つ理解出来ないで入れば、
何かをオカシそうに話していた。

橘にケガをさせた事。

その事を、悪いとは思っていない事。

『悪かった』『申し訳なかった』反省という事を意味の篭った、
言葉が1つも出てこなかった。

なんて人なの・・・

第一印象は無礼者

それからは悪印象しか持てず、握り小振りを作り、
沸きあがる怒りを押さえ込んでいれば、

不二君からの一言

押さえつけていたモノが一瞬に無くなり、
不二君に拍手をしたくなった。

が、表立っては出来ないので心の中で手を叩いた。

腰を引きながらも、橘には一言残し去った人物が
先ほど話に出てきた立海のテニス部だと言うことが解り、

立海=アイツみたいな人間の集まり場

そんな公式が簡単に頭の中に出来た。



浮かんでくる気持ちに周りが見えなくなっていたのか、
名前を呼ばれ、瞬きを1つすれば、
全員の視線を集めており、

「ゴメン、なんだった?」

全員に聞き返せば、

「すんだコトだ、気にするな」

低い声は、区切りが付いている事を告げる。

「そ、そうなんだ」

言葉を挟むことも出来ず、雰囲気につられる様に
首を動かし言葉を返す。

それからは、部活の現状報告になり、
時間もあるからと、切り出した不二君と共に部屋を出た。

話す事も見付からず、どうしようかと思うも不二君からの
会話でなんとか、出入り口まで歩き、
別れを告げる様と、言葉を作るが、

「今度、ウチと立海の試合があるから、
 時間があったら見に来るといいよ」

告げられる言葉に、驚けば、

「さっき、橘に言われて、
 無理やり納得してみたいに見えたからね」

見抜かれている事に驚くも、
表情に出ていたのかと寮頬に手を当てるが、

「大丈夫、表情には出てなかったから安心して」

再び笑いを誘ってしまったらしく、
気の抜けた返事を返してしまう。

「無理は言わないけど、良かったら試合見に来て。
 僕達、青学が勝つから」

笑っていた表情から、真剣な表情に

「都合が付いたら見に行きます」

頷き、別れを言い離れた。

なんだか、凄い自信だなぁ・・・

傾きかけた太陽を受け、1つの花壇の前に腰をおろした。

言われた言葉を思い出し、
伸び始めている雑草を抜いた。

勝つから・・・か・・・・・・

花壇の花を見ながら、手を止め先ほど病室でのやり取りを思い出す。

に、しても橘が納得してても、妹さんが納得してないでしょうに・・・

家族の思いは複雑なんだぞ、橘

考えながらの草抜きを再開する。

「あ、それは花だね」

掴んでいた手を止め、意識を考えから花壇へと変え、
持っている花を離す。

「何かあった?」

「えっと・・・」

振り返ることも出来ず、声を聞くだけで背後に誰が立っているのかが解る。

顔が熱くなり、ドキドキと音が大きくなり体の中に響く。

「なんだかイライラしている様に見えたけど?」

背中から聞こえていた声が横から聞こえ、
心配そうに視線を送っているのを視界に端で見え、

「大丈夫です!」

なんとか、笑って言えている事を願いつつ、

「ダメですね、考え事しながらの草むしりて・・・」

幸村さんに言ってもらわなきゃ花まで抜いちゃう所でした。

苦笑いをし、止めていた手を動かした。

意識しないようにしないと・・

震える手に力を入れ、花を掻き分けながら雑草を抜いていく。

「あ、さん」

「はい?」

名を呼ばれ、振り返れば近くに顔があり、
腰を落としかけるが、

「軍手は付けないの?」

首を傾げ、問われる言葉に

「え?あ、どうも使いにくくて・・・」

土に汚れた手を目に写し、苦笑いをすれば、

「終わったら、きちんと手を洗わないとね」

小さい子をあやす様に、柔らかな声で紡がれる言葉に、

「そうですね」

なんとか微笑み、

「あ、そろそろ、気温が下がってきますので
 室内に戻ってくださいね」

必死に言葉を作り、室内への移動を促す。

「そうだね・・」

ゆっくり立ち上がり、

「また見に来るよ」

手を振り、室内へと入って行く姿を立ち上がり
小さく手を振って見送った。


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                第1話

                    TVも見ていなければ、コミックも読んでいない時の人物なので、
                    違う所が多々あると思います。
                    大きな心で許してくださいませ。
                    予定では3話ぐらいで終わると思います。 
                                                          2005 1 17